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東京高等裁判所 昭和60年(行コ)113号 判決

東京都中央区銀座二丁目七番一七号

控訴人

オリンピツク観光株式会社

右代表者代表取締役

岩崎与八郎

右訴訟代理人弁護士

木下良平

東京都中央区新富二丁目六番一号

被控訴人

京橋税務署長

竹内裕

右指定代理人

藤宗和香

和粟正栄

塚本博之

渋谷三男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五四年三月二八日付けでした控訴人の昭和五〇年一一月一日から昭和五一年一〇月三一日までの事業年度に係る法人税に関する更正及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決事実適示第二(添付の別表1、2を含む。)のとおりであるから、これを引用する(ただし、九二丁裏九行目の「返装」を「仮装」と改める。)。

三  証拠関係は、本件記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、当審において提出された資料を含む本件全資料を検討した結果、控訴人の本訴請求は理由がないのでこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の理由説示(原判決一〇三丁表二行目から同一三二丁表九行目の「こととし、」まで)と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一〇四丁裏「所有する」の次に「(このことは当事者間に争いがない。)」を加え、同一〇五丁表末行の「評価額」の次に「(更地価格)」を加え、その裏二行目の「判断する。」の次に次のとおり加える。

「もつとも、後記認定のとおり日興鑑定は、本件土地の、マンション建設計画に基づく整地後の更地価格を独立して鑑定評価したものであるから、後記説示のとおり、本件土地の評価額を定めるに当たつては、日興鑑定による評価額(更地価格)につき更に建付減価がなされるべきである。」

同裏四行目の「注文をつけない、」を「特定の条件設定を付さない」と、同一〇六丁表三行目の「鑑定結果」から同四行目の「操作」までを「右の点以外鑑定結果について特に条件設定を付さないものであり、評価額について何らかの意図的操作」とそれぞれ改める。

2  同一〇八丁裏末行の「時価」の次に「(本件土地の更地価格)」を加え、同一一〇丁表七行目の「証人有山房夫」を「原審証人有山房夫」と改め、同一一一丁表五行目の「いうべきである。」の次に次のとおり加える。

「また、当審証人有山房夫の証言によつて真正に成立したものと認められる甲第一七号証の二(不動産鑑定士小林秀嘉作成に係る昭和六一年一二月一八日付けの意見書。なお、甲第一六号証は同人作成に係る昭和六一年一二月一五日付けの鑑定評価書であり、その成立も右証言によつて認める。以下、これらを併せて「小林鑑定」という。)」にも、『当時近隣には、雅叙園マンションが建築されたに過ぎない状況で、地域的にはマンション用地に移行する状況ではなかつたということを近隣住民より聴取している。日興鑑定の運用は使用目的を限定した限定価格を、全くその状況でない時点に逆価格時点修正を施して価額としたことは大きな誤り』である旨の意見記載があるが、同様の理由により、右意見を採用することはできない。」

3  同一一二丁裏六行目の「有山鑑定」の次に「及び小林鑑定」を、同八行目の「両鑑定」の次に「及び小林鑑定」をそれぞれ加え、同末行の「いわなければならない。」の次に次のとおり加える。

「また、小林鑑定(前掲甲第一六号証)が採用した比較事例地九例のうち三例((オ)、(キ)、(ケ))は日興鑑定が採用した事例地(五例中A、B、Cの三例)と一致し、右三例の売買価額はそれぞれ一平方メートル当たり二八万〇八五〇円、四二万三五〇〇円及び三七万八七八七円であるところ、小林鑑定はこれらにつきそれぞれ地域格差、標準化等の補正を施し、順次二〇万四六一九円、二〇万四四一三円及び一九万四二四九円の各計数を算出しているのであるが、右補正の理由については何らの説明がない(右補正は、前記のとおり、小林鑑定が本件土地の最有効使用を中層マンション建築としなかつたことに基づいているものと思われるが、そうだとすれば、その補正は過大である。また、小林鑑定は、その比較事例地の各売買価額に補正を施した上、一平方メートル当たり(最低)一八万八九六八円から(最高)二四万四四〇〇円までの各計数を算出し、本件土地につき比準価格を二〇万円と試算する旨を述べるのであるが、これらの点についても具体的な説明はない。なお、当裁判所は控訴人の申請により前記小林秀嘉を証人として採用したが、同人は再度の呼出にもかかわらず当法廷に出頭しなかつたため、控訴人はその尋問を放棄したものである。)」

4  同一一四丁表一〇行目の「用地としては」を「用地であることを考慮すると、その評価としては」と、同行の「控除要因」を「当然の控除要因」とそれぞれ改め、その裏一行目の「補修正案」の次に「及び小林鑑定」を加え、同二行目の「のである」の次に次のとおり加える。

「(なお、仮に右悪臭等を補正要因として考慮した場合の本件土地の評価額の算定数値は後記のとおりである。)」

同一一六丁七行目の「四パーセント)、」の次に「交通・接近条件において六パーセント並びに」を加える。

5  同一一九丁裏八・九行目の「いうべきであるし、」を「いうべきである。したがつて、以上の点に関する控訴人の右主張はいずれも理由がない。なお、」と改め、同末行の「鑑定評価」から同一二〇丁表四行目の「いうべきである。」までを次のとおり改める。

「鑑定し、本件土地上にある工場等の建物は、これをないものと仮定して鑑定したものであり、本件土地の評価に当たり建付減価をしていないことが認められるが、そのこと自体をもつて直ちに右鑑定を不当というべきではなく、ただ後記説示のとおり、本件土地の評価額を定めるに当たつては、日興鑑定の評価額(更地価格)につき更に建付減価がなされるべきである。」

6  同一二一丁裏二行目の「証人有山房夫」を「原審証人有山房夫」と改め、同一二二丁表四行目の「いうべく」の次に「(小林鑑定についても、同様にいうことができる。)」を加える。

7  同一二三丁表五行目の「理由がなく、」から同七行目の「である。」までを「理由がない。」と改め、その裏六行目の「評価額」の次に「(更地価格)」を加え、同九行目(算式)の次に改行の上、次のとおり加える。

「そして、前記のとおり日興鑑定は本件土地の更地価格を鑑定評価したものであるから、本件土地の評価額を定めるに当たつては、本件土地上に建物等が存在するのであれば、更に建付減価が必要であるというべきところ、前掲乙第三号証(有山鑑定)によれば、昭和五三年当時、本件土地上には工場用建物、鉄筋コンクリート造りの煙突等が残存し、これらを除去し本件土地を整地するために要する費用は合計金三〇〇〇万円と見積ることができ、これを評価時点に時点修正すると、金二八四三万五〇〇〇円となることが認められるから、本件土地一平方メートル当たりについて金一万〇八三三円(二八四三万五〇〇〇円÷二六二四・八七平方メートル。一円未満四捨五入)の建付減価を生ずることとなる。

したがつて、右金額を前記日興鑑定の評価額(更地価格)から控除すると、本件土地の評価額は一平方メートル当たり金二六万六四四九円となり、被控訴人が本件土地の評価額として認定した額(一平方メートル当たり金二〇万五六五二円)は右金額を下回るものである。(なお、本件土地につき目黒川の悪臭・水害危険を減価要因としてみるべきかどうかについては、前記各鑑定によつて相違があり、前記のとおり当裁判所としては必ずしもこれを減価要因として考慮すべきではないと判断するが、仮にその減価率を五パーセント(小林鑑定・前掲甲第一六号証による数値)として右評価額に減価補正を施したとしても、本件土地の評価額は一平方メートル当たり金二五万三一二七円(一円未満四捨五入)となり、被控訴人の右認定額はこれを下回るものである。)

以上によれば、被控訴人が本件土地の時価を一平方メートル当たり金二〇万五六五二円と認定し、これに本件土地の実測面積二六二四・八七平方メートルを乗じて得た金五億三九八〇万九七六五円をもつてその評価額としたことは適法というべきである。」

8  同一二四丁裏八・九行目の「みつからなかつた」を「見付からなかつた」と改め、同一二五丁表末行の「各数値」の次に「(本件土地の評価額については一平方メートル当たり金二六万六四四九円)」を加え、その裏二行目の「次の算式」から同一二六丁表末行までの全部を次のとおり改める。

「次の算式のとおり一株当たり金五〇五五円となり、被控訴人が本件株式の時価として認定した額(一株当たり金三八〇五円)は右金額を下回るものである。

(算式)〈1〉 オリンピツク興業の純資産評価額

六億二一〇三万〇五一二円

442,195+18,484,620+3,255,799+272,137+65,660+12,425,885+(266,449×2624.87)-113,309,770=621,030,512

(少数点以下切捨て)

〈2〉 オリンピツク興業の帳簿価額による純資産価額

二一六三万六五二六円

442,195+18,484,620+3,255,799+272,137+65,660+12,425,885+100,000,000-113,309,770=21,636,526

〈3〉 資産の評価替えに伴つて生ずる評価益(〈1〉-〈2〉)

五億九九三九万三九八六円

〈4〉 右評価益に対する法人税相当額(〈3〉×〇・五三)

三億一七六七万八〇〇〇円

599,393,986×0.53=317,678,000(1,000円未満切捨て)

〈5〉 純資産価額(〈1〉-〈4〉)

三億〇三三五万二〇〇〇円

(一〇〇〇円未満切捨て)

〈6〉 一株当たりの純資産価額(〈5〉÷六万株)

303,352,000÷60,000=5,055(1円未満切捨て)」

9  同一二六丁裏六行目の「右工場、」から同一二七丁表一行目の「いうべきであるし、」までを「本件土地上の建物等の除去費用については、建付減価の算定においてこれを実質的に斟酌したことは前記認定説示のとおりであつて、右減価のうえ更に別途に除却費用を計上すべき理由はなく、また」と改め、同一〇行目の「一株当たり」からその裏一行目の「いうべきである。」までを次のとおり改める。

「一株当たり金三八〇五円を下るものではないから、被控訴人が右金額をもつて本件株式の時価(一株当たり)としたことは適法というべきである。(なお、右建物等の評価額につき、仮にこれを全く無価値のものとし(すなわち、被控訴人の抗弁7(一)記載の建物・設備・造作・構築物・機械の合計額金三四五〇万四一〇一円を算入しない。)、かつ、目黒川の悪臭等による減価率を五パーセントとして算定した本件土地の一平方メートル当たりの前記(仮定)評価額金二五万三一二七円を前提として本件株式の時価を算定したとしても、その額は一株当たり金四五一一円となり、被控訴人の右認定額はこれを下回るものである。)」

10  同一三〇丁裏六行目の「租置法」を「措置法」と改める。

11  同一三二丁表八・九行目の「棄却することとし、」を「棄却すべきである。」と改める。

二  そうすると、同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊卓哉 裁判官 大内俊身 裁判官 土屋文昭)

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